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『悲哀』

昔、サトウハチローさんとおっしゃる作詞家がおられました。
外観や、その方の歴史を見ると想像しにくいのですが、とても優しい詩をつくられる方です。

その方がまだ若く、荒ぶっておられた時期がありました。お父様の理不尽なお母様への扱いに絶えられず、不良少年になって行くのです。浅草では相当な顔にまでなったと聞きます。

サトー先生の詩の中で、心に残る一節をご紹介します。

氏が、父親から完全に勘当を受け、家庭教師とともに遠く、小笠原まで島流しに合いました。

当時、小笠原と云えば南方に位置する絶海の島です。

そこでの家庭教師とともに過ごす単調で退屈な(テレビはなく、ラジオも届かない時代)日々は、それは辛かったでしょう。その中で氏の感性は益々鋭敏に澄んで行ったのです。

ある日、草原に大の字に寝転び、青く晴れ渡った空を見ながら、母を思い、故郷を忍び、感じた悲哀を後に作詞し、”長崎の鐘”と云う詩の中で使われました。

こよなく晴れた青空を、悲しと思う切なさよ、、、、。

僕はこの気持ちを嫌と云う程判る気がします。平和に晴れ渡った青空の下、よその人はいとも楽しく、幸せなのに、この世で自分一人が不幸なのです。

幸せに満ち、楽しんでいる友と一緒の時、フッと孤独感を味わったことはありませんか。自分はこの人達とは違う。その孤独感です。

僕は落ち込むと、”こよなく晴れた青空”が頭をよぎるのです。

人は皆、寂しさを抱えて生きているのです。貴方も一人ではありません。

2011年5月6日

成嶋弘毅



 
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